TBF アヴェンジャー ー戦後自衛隊でも使われたベストセラー機

 TBFアヴェンジャーは、アメリカのグラマン社が開発した雷撃機です。太平洋戦争開戦とほぼ同じ時期に開発され、第二次ソロモン海戦やマリアナ沖海戦などに参加し、戦果をあげました。大戦後は各国に供与され、かつての敵であった日本でも活用されます。今回は、TBF アヴェンジャーとはどのような機体だったのかを紹介します。

運用史

 TBFは、TBDデヴァステイターの後継機として運用されました。TBDは1935年に登場しましたが、日本で97式艦上攻撃機の3号が制式化され、時代遅れとなってしまいました。TBD自体は1944年まで活躍していましたが、TBDに代わる次期主力雷撃機開発の必要性を認識したアメリカ軍はグラマン社に設計を依頼しました。
 日本が真珠湾攻撃を行った1941年12月7日の午後、グラマン社はTBFの完成披露を行いました。この時は、新しく完成した工場の式典も行われており、新工場のお披露目でもありました。
 太平洋戦争開戦と共に、アメリカは戦時体制に突入し、装備の量産が図られました。TBFも同様であり、工場は量産体制へと移行しました。TBFは1942年6月に行われたミッドウェー海戦までに100機が完成していました。しかし、ミッドウェー海戦までに空母搭載は間に合わず、1個分隊に少数が配備されたのみで、大きな損害を出してしまいました。
 TBFが本格的に投入されたのは第二次ソロモン海戦です。ここには24機が投入され、7機が撃墜されましたが、空母龍驤の撃沈に寄与しました。1942年11月に行われた第三次ソロモン海戦では、戦艦比叡を航行不能にさせ、自沈に追い込みました。TBFの最初の戦果とされています。マリアナ沖海戦では、220機が投入され、索敵機として日本艦隊の捜索任務につきました。攻撃隊に参加したTBFは空母飛鷹の撃沈に貢献します。
 TBFは雷撃機として活用されましたが、その一方で対潜哨戒機としても活用されます。太平洋と大西洋の両洋で空母や護衛空母に搭載され、輸送船団上空での警戒任務や対潜哨戒にあたりました。その結果、約30隻の潜水艦撃沈に成功しています。TBFは後継機のダグラスA-1スカイレイダーの配備が太平洋戦争終結までに間に合わなかったため、終戦まで第一線で活躍しました。

アメリカ以外での運用

 TBFは9839機生産され、アメリカ以外でも運用されています。初期型だけでなく、初期型以外の派生型もイギリス海軍で運用されました。イギリス海軍で運用されたものは、ターポンの名称で使用され、初期型はアヴェンジャーMk.1として402機が運用され、TBM-1はアヴェンジャーMk.Ⅱとして334機、TBM-3、334機はMk IIIとして運用されました。
 イギリス海軍での運用は戦争終結後も続けられ、対潜任務に従事したTBFはASMk IVとされました。
 TBFはイギリスだけでなく、ウルグアイやカナダ、フランスなどで運用されました。日本でも対潜哨戒任務のために供与されました。日本に供与されたのは1954年12月で、索敵型のTBM-3Wと攻撃型のTBM-3Sが供与されました。しかし、当時は老朽化していたために、対潜哨戒機が導入されるまで、訓練用に運用されるのみでした。

機体構造

 TBFの特徴は頑丈なところです。終戦後に太平洋戦争中に日本の艦上攻撃機天山に乗っていたパイロットが、TBFを操縦した際、機体があまりにも重かったために驚いたというエピソードもあるほどです。
 雷撃機の特徴として、被弾率が高いということがあります。雷撃を行う際には、魚雷の命中率を高めるため、目標となる艦船まで、低空で飛び続ける必要があります。しかし、目標となる艦船は無防備ということはありません。激しい対空砲火を浴びせてきます。単艦ならまだしも、艦隊ともなれば、護衛の駆逐艦や巡洋艦も砲火を浴びせてきます。それだけでなく、上空には護衛の戦闘機もいるかもしれません。こうした中で、飛ぶ雷撃機には防弾性が要求されました。
 防弾性に加えて重要なのが、安定性です。魚雷は大型であり、それを抱えて低空を飛行するためには高度な安定性が求められます。
 防弾性と安定性に加えて、TBFに求められていたのが、航続距離です。TBF以前に主力だったTBDは航続距離が短く、戦闘機や急降下爆撃機との連携が難しいという欠点がありました。この欠点を解決する必要もあったのです。
 TBFは防弾性が高く、機体強度を重視した設計となっていました。エンジンには、1,900馬力ライトR-2600-20 サイクロン14が採用され、運動性も良好でした。乗員は操縦士、無線士、砲塔射撃手の3名となっています。航続距離は、完全武装の状態でも1,000マイル(1,600km)を誇っていました。
 固定武装として、12.7mm重機関銃が左右の翼内と後部の砲塔に備え付けられています。機腹部には7.62mm機関銃も装備していました。雷撃機にしては重武装な機体ということで、対空攻撃力も高かったと言えます。機体下にある爆弾倉には、Mk13魚雷や2000ポンド爆弾1発、500ポンド爆弾であれば4発の搭載が可能でした。翼下にはロケット弾や3.5インチ FFARの搭載も可能でした。


主要参考資料
・『TBF/TBMアベンジャー (世界の傑作機)』文林堂、1998年。

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