イラストリアス級空母―第二次世界大戦で活躍した装甲空母

 イラストリアス級航空母艦は、イギリス海軍の航空母艦です。6隻の建造が計画されました。イラストリアス級は世界初の装甲空母として、第二次世界大戦におけるイギリス海軍の主力として活躍しました。今回は、イラストリアス級空母とはどのようなものだったのか紹介します。

イラストリアス級空母の概要

 イラストリアス級は世界初の装甲空母です。強靭な防御力を誇っており、数々の損傷を耐えながらも、生き残ってきた艦艇です。しかし、装甲を強化したために他の空母と比べると搭載機数は少なくなっています。後に改良が行われ、改良型は格納庫スペースを確保し、搭載機を増加させました。
 イラストリアス級の船体は、アーク・ロイヤル級の設計を基本としています。その上で走行を施しています。基準排水量は、2万3207トンです。当時の海軍艦艇は第2次ロンドン条約によって制限が加えられていました。この条約では、基準排水量は2万3,000トンに収めなくてはなりません。そのため船体はさらに圧縮されました。
 本級の兵装は45口径11.4cm連装両用砲Mk.IIIを2基ずつ4群に分けた上で、前後のエレベータ両舷にそれぞれ配置しています。計8基16門が搭載されています。副兵装として、2ポンドポムポム砲を搭載しています。配置場所は、8連装機銃をアイランド前後に2基ずつ、アイランドと反対位置の左舷側に2基配置しました。この配置はアークロイヤル級と同じです。これらの対空兵装は戦時中に逐次増強されました。加えて、AW286とAR285というレーダーが戦時中に追加されています。
 イラストリアス級の特徴としては、強靭な防御力で知られています。イラストリアス級では、格納庫を装甲ボックス化しています。格納庫は前後エレベータ間に設けられており、天蓋が飛行甲板に利用されています。そのため、飛行甲板が装甲化されているという訳ではなく、あくまでも格納庫に施された装甲が強化されたというものです。エレベータへの防御は施されていません。
 装甲厚は上面・床面76mm、側面114mm、前後64mmにも達しています。このような重装甲を施したために、装甲重量は1,500トンにも達しています。この装甲のおかげで1,000ポンド(454kg)爆弾の急降下爆撃にも耐えることが可能です。格納庫天蓋部分以外の飛行甲板にも38mmの装甲が貼られています。この重装甲のおかげで、急降下爆撃などにも耐えることができました。
 機関部は、アーク・ロイヤルとほぼ同構成となっています。アドミラルティ式過熱器付3胴型水管缶2基とパーソンズ式ギヤード・タービン1基の3ユニット構成となっています。これによって最大速力は30.5ノットとなっています。
 第3グループでは、改良が施されており、排水量が増大したのに合わせて、出力の増大が求められました。この改良では機関を1ユニット追加することになりました。
 先ほども紹介したように、防御装甲のために重量が重くなってしまいました。トップヘビーを避ける必要があり、艦載機運用能力は制限されてしまいました。アーク・ロイヤルと比べて艦載機の搭載数は約半数となっています。
 格納庫の長さは140m、高さは4.9mとなっています。搭載機は36機となります。大戦後期には57機の収容が行われましたが、限界一杯まで搭載していました。そのため、第2グループでは51m分の下段格納庫を追加しています。下段格納庫を設けるために、上段格納庫の高さは4.3mに抑えることになりました。格納庫を追加したために51機の搭載が可能になりました。第3グループでもさらに格納庫の増強が図られます。下段格納庫長は140mとなり、高さは上下共4.3mになりました。この結果、81機の運用が可能になりました。
 改造によって格納庫が強化されましたが、艦載機にも制限が加えられることになります。シーファイアは多段式の折り畳み翼を採用し、搭載されました。しかし、アメリカ製のコルセアは主翼を折りたたんだ際の高さが、4.7mと格納庫に収まるサイズではなかったので、運用に支障が出てしまいます。

イラストリアス級の活躍

 イギリス海軍は、ヨーロッパ、地中海、大西洋、インド洋、そして太平洋と世界各地で戦争に参加しました。大戦開始当初は地中海で活躍します。タラント空襲にも参加し、イタリア海軍の主力戦艦3隻を撃沈する戦果を挙げました。その後、地中海ではイギリスの輸送船団護衛にもあたります。この時、ドイツ空軍の急降下爆撃にさらされ、大破しますが、撃沈は免れます。
 その後、1941年12月に日本が真珠湾攻撃を行い、第二次世界大戦に参戦すると、イラストリアス級空母も他のイギリス海軍の艦艇と共に大型艦と共にインド洋から東南アジア方面で活動することになります。太平洋戦線では、日本に対する艦載機による空襲にも加わります。また、沖縄戦などにも参加し、日本の特攻攻撃にも晒されました。しかし、やはり重防御なのが幸いし、撃沈は免れます。



主要参考資料
『世界の艦船増刊第71集 イギリス航空母艦史』海人社、2022年。

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